画像の圧縮(その1)
1.画像圧縮の特徴
一般的なデータを圧縮する場合には、圧縮前後でデータが変化してしまっては困るので、必ず元のデータと同じように復元できる圧縮法(可逆圧縮)が用いられます。
一方、画像データは一般に非常に大きなサイズを有します(たとえば、400万画素級のデジタルカメラのフルカラーの画像を圧縮しなかった場合、4000000(画素数)×3(RGB各成分)=12Mbyteのデータ量になります)が、以下のような特徴があり、これらの点を利用して一般データよりも大きな圧縮率を実現することができます。
画像データには冗長性があります。
画像データでは、おなじような明るさの画素が続いて現れることが多く、周囲との明るさの変化が大きい部分はそれほど多くはありません。これを大きな自己相関を持つ、あるいは冗長性がある、といいます。
人の目の特性を利用できます。
人の目は、明るさの差には敏感ですが色の差には鈍感です。また、なだらかに変化している(空間周波数が低い)ところでは細かい変化に敏感ですが、急激な変化をしている部分(空間周波数が高い)ところでは細かい変化を関知できません。
これらの点から、必ずしも圧縮前後で全く同じデータを復元できなくても(不可逆圧縮)、それが人間にとって感知できなければ実用上は問題ないわけで、これを利用した圧縮方法もあります。
2.ランレングス圧縮
ファクシミリのような白黒画像の圧縮では、ランレングス(run length)圧縮という手法が用いられます。
ファクシミリの場合、読みとりの分解能に比べて、読みとり対象の画像データの変化が非常に少ないという特徴があり、横方向のデータを見ると白い点が長く続いた後、黒い点がまた長く続く、というような感じになります。
たとえば、以下のようなデータの場合を考えましょう。
この白黒が続いたデータをそのまま送るよりは、「白/黒」と「続いている長さ」をデータ化してやれば、かなり圧縮できることになります。
上記のデータの場合、以下のようになるでしょう。
黒120白50黒60白130黒120
実際のファクシミリでは、上記のような手法に加えて、長さを表す符号にデータの圧縮で説明した
Huffman符号化
を施すなどの工夫をしたMF(Modified Huffman)符号が使用されています。
3.GIF(Graphics Interchange Format)形式
現在、インターネット等で広く使用されている画像形式の一つに、GIF(Graphics Interchange Format)形式というものがあります。
GIFは、インターネット以前のパソコン通信が主流だった時代に、米国のCompuServeというパソコン通信運営業者が画像をやりとりするためのファイル形式として考案したものです。
当時の低速な通信回線上で画像を転送するためには圧縮をしなければなりませんでしたが、GIFでは以下のような方法を使用しています。
一枚の画像で使用できる色を最大256色に制限しました。
GIFでは、表現できる色はRGB各8bitのフルカラーですが、一枚の画像の中で同時に使用できるのはその中から256色だけに限られます。
GIF形式のファイルには、以下のようにGIFファイル内で使用される色番号と実際の色の対応表が含まれており、これを参照して元の画像を復元します。
色番号
実際の色
R
G
B
0
0
0
0
1
0
255
0
2
255
0
0
3
0
0
255
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
255
192
128
48
これにより、フルカラーの画像をそのまま用いるよりも3分の1のデータ量ですみますが、表現できる色の数が少なくなるので写真画像などの自然画には向きません。
上記の色番号で表現される画像データをさらに、
LZW法
で圧縮します。
LZW法はデータの圧縮で使用される可逆圧縮法なので、この圧縮による画像データの劣化はありません。
GIF形式は、元々含まれる色の数が少ない画像の場合、圧縮前後でデータが完全に復元される可逆圧縮法を用いるため、圧縮による画質の劣化がない特徴があります。従って、インターネットのWebページにおけるタイトル文字画像や説明図のような、人工的にCGで作成した画像には適しています。一方、画像中で同時に表現できる色の数が256色しかないため、写真等の自然画像の表現には不向きです。
JPEG圧縮した、ランレングス圧縮の説明図の例
(JPEGは不可逆圧縮なので、文字などの周りにノイズが生じている)
また、GIF形式に使用されるLZW圧縮法には特許問題があるため、現在では自由に使用しにくい環境にあります。
これらの問題を回避するため、可逆圧縮方式として
ZIP
を用い、同時に表現可能な色の制限をなくしたPNG(Porable Network Graphics)形式が提案されています。
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katahira@med.akita-u.ac.jp